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前の 2 回で、Office 365 が持っている同じ用途 (たとえばファイル共有、予定共有をしたい) を実現する機能について、どの機能をどのような考え方で使い分ければいいのか、また、どのような用途にどのように展開をするのが良いのかという解説のうち、下記の 3 つについて取り上げてきました。
- 予定共有や施設予約を行いたいのだが、予定表は Exchange と SharePoint の両方が持っている。どちらを使えばいいのか。
- SharePoint はオンラインとオンプレミスの選択肢があるが、社内でどのように活用していけばいいのか。
- ファイルの保管場所はどこを使えばいいのか
最終回のこの記事では、Office 365 が持っているソーシャル機能を中心に使い分けを解説していきたいと思います。
- ソーシャル機能は SharePoint と Yammer のどちらを使えばいいのか。
組織におけるコミュニケーションと共同作業についての分類
本題に入る前に、組織内でのコミュニケーションについて「共有範囲」と「緊急性」の 2 つの軸で分類してみたいと思います。 コミュニケーションの共有範囲については第一回でも取り上げましたが、全社、拠点、チーム、個人での共有により利用すべきツールが異なってきます。また、緊急性の面で見ると、緊急度が高い内容はリアルタイム性が求められます。メールはビジネスの世界では帰ってくるまでの期待値が 4 時間というデータもありますので、緊急を要するコミュニケーションには適していません。
Office 365 ではこの 2 つの軸の組み合わせにより、いくつかの異なるツールが用意されています。一見同じような用途に見えても違う機能として提供されているものがあるのはこのような理由もあります。ちなみに、「共有範囲」と「緊急性」は相反する関係にあり、「共有範囲が広く」「緊急性が高い」コミュニケーションや、「共有範囲が狭く」「緊急性が低い」コミュニケーションをカバーするツールはないことに注意してください。

そして、これらのツールは以下の図のように、中心にある Lync のプレゼンス情報を見ながら適切なツールを使い分けていくことが想定されています。マイクロソフトでも、普段は PC に常駐している Lync クライアントに表示されている主な連絡先ユーザーのプレゼンス情報を見て、メールを送るか電話をするか、テキストメッセージを送るかを判断しています。 これにより、相手の状態にあった適切なコミュニケーション手法を選択することができ、迅速なコミュニケーションを行うことができるようになります。

コミュニティサイト、Newsfeed、Yammer はどれを使うべきか
それでは、コミュニケーション ツールについての全体像や利用方法がなんとなくわかったところで、本題に戻りましょう。「つながり中心」でネットワーク上で対話をするツールであるエンタープライズ ソーシャル/コミュニティですが、Office 365 では、SharePoint コミュニティ サイト、SharePoint Newsfeed、Yammer の 3 種類が存在します。これらは同じようなポジショニングの機能ですが、どれを使えばいいのか疑問に思うかもしれません。
この場合は迷わず「Yammer」を選択するようにしてください。SharePoint コミュニティ サイトや SharePoint Newsfeed が初期の SharePoint 2013 に実装された後、Yammer が買収されて Office 365 に統合され、今後は Yammer の機能を強化していくことが宣言されていますので、Yammer を利用することを強くお勧めしています。現在はまだ一部の機能で Newsfeed のほうが Office 365 との相性がいい場合もありますが、それも間もなく解消されていく予定です。コミュニティ サイトについても、「組織内外のユーザー数がそれなりにいる場合の合同プロジェクトなどで 1 サイトのみを使い情報共有する場合」くらいのかなり限定された状況を除いては Yammer を利用することをお勧めします。Yammer にはグループを区切ってそこに参加するメンバーにのみ情報共有を制限するような機能もあります。また、外部ユーザーを参加させる機能もあります。
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コミュニティ サイト
コミュニティ メンバーが共通の関心のあるトピックについて意見を交換する場所です。メンバーは、カテゴリを検索したり、ディスカッションを人気の高い順で並び替えたり、ベスト リプライの投稿のみを表示したりして、内容を閲覧し、関連性の高いコンテンツを見つけることができます。メンバーは、コミュニティに参加することで評価ポイントを獲得します。コミュニティには、ディスカッションを始める、ディスカッションに返信する、投稿を「いいね!」と評価する、ベスト リプライを指定するなどして参加します。
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Newsfeed
SharePoint Newsfeed を使うと、外出中でも組織内でのソーシャル ネットワークにつながることができます。フォローしている SharePoint サイト、ドキュメント、人の更新情報を簡単にキャッチしたり、自分のフィードへ簡単に移動し、スレッドでの情報交換を行なうことができます。ブラウザーからのアクセスのほかに、モバイルアプリも提供されているため、移動中、外出中もソーシャル ネットワークにつながることができます。
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サイトメールボックス、Yammer、グループの違いは?
次は少し複雑な課題です。2013 世代になってサイトメールボックス、Yammer、そしてこの年末にかけて新たに Office 365 グループの機能が新たに実装されますが、どれも特定のグループのメンバーで情報、ファイルをやり取りするための仕組みなので、どのような時にどれを使うべきか迷います。どれも比較的新しい仕組みなのですが、それぞれ微妙に癖があります。以下に主な比較項目についてまとめてみました。
| 比較項目 |
サイトメールボックス |
グループ |
Yammer |
| 基本機能とアクセス権 |
| 基軸となる機能、製品 |
SharePoint サイト |
Outlook Web App (Exchange Online) |
Yammer |
| 利用機能 |
SharePoint サイトおよび Exchange 共有メールボックス |
Exchange グループ会話スレッド、グループ予定表、および OneDrive for Business (ファイル、ノートブック) |
Yammer スレッド、ファイル、ノート、テキストメッセージ、投票、イベント、リンク |
| 必要ライセンス |
SharePoint Online および Exchange Online |
Exchange Online および OneDrive for Business |
Yammer |
| 外部ユーザーのアクセス |
SharePoint 部分のみ可能 |
不可 |
可能 (外部ネットワーク上) |
| 接続クライアント |
ブラウザー (SharePoint およびOutlook Web App)、Outlook (共有メールボックス部分) |
ブラウザー (Outlook Web App および OneDrive for Business) および OWA アプリ |
ブラウザーおよび Yammer アプリ |
| 管理機能 |
| 管理形態 |
SharePoint サイト管理者による管理 |
エンドユーザー (Exchange 管理者によるエンドユーザー管理の禁止も可能) |
エンドユーザー (Yammer 管理者によるエンドユーザー管理の禁止も可能) |
| 任意のユーザーを管理者に指定 |
SharePoint サイト管理者による管理 |
可能 |
可能 |
| 任意ユーザーに公開 |
好みのサイトメールボックスを探す機能はない (URL を教えればアクセスさせることはできる) |
可能 |
可能 |
| プライベートに設定 |
可能 |
可能 (初期設定で一度設定すると公開に変更できない) |
可能 |
| コンテンツ |
| 外部からの投稿 |
メールアドレス宛にメール送信 |
メールアドレス宛にメール送信 |
メールアドレス宛にメール送信 |
| 会話スレッドの削除 |
可能 |
不可能 |
隠すことが可能 |
| ファイル毎のサイズ制限 |
2GB |
2GB |
5GB (プレミアム プラン) |
| 組織全体のストレージ サイズ制限 |
SharePoint サイトのストレージ サイズに依存 |
なし (OneDrive for Business 無制限時) |
なし |
| その他 |
| 「いいね」機能 |
なし |
なし |
あり |
一概に言うことは難しいのですが、SharePoint サイトメールボックスは限られたメンバーだけで行うプロジェクトで他のメンバーは知る必要がないような場合に立ち上げるとよいでしょう。SharePoint サイトのフル機能を使えるので、プロジェクト管理をはじめとする複雑な処理をする場合にお勧めです。グループは、ファイルの保存先が OneDrive for Business で容量が実質無制限ですので、大容量ファイルのグループ内での共有には向いています。また、一度作成したスレッドを消すことができないので、ログを取るのに向いています。その他の一般的な用途は Yammer を使うのが今のところよいと思われます。マイクロソフト社内でも一番使われているのは Yammer です。ただし、ファイルやノートについては、Yammer 以外の場所からの検索、参照性があまりよくなかったり、データセンターがアメリカにあり Office 365 の標準的な実装にまだなっていないことを考えると、ファイルやノートを共有する場合は実体は OneDrive for Business や SharePoint サイト上において、Yammer スレッド上ではそれらへのリンクを張る、という使い方が実用的な使い方です。
Lync と Yammer の違い
最後に、Lync ではソーシャルはできないの?と聞かれることもたまにあります。これは、いままでの説明を読んでいただいていればもうお分かりですね?Lync は複数者間の会話スレッドを立ち上げることができるので、LINE のような感覚でコミュニケーションできるのですが、これは時間的にゆるいつながりというよりは即時性、リアルタイム性を求めているため、コミュニケーションが始まったら指定されたメンバーはコミュニケーションが終わるまでは時間拘束されます。Yammer の場合は、誰かが好きな時間にスレッドに書き込んでおけば、それを違う時間に別のメンバーが見てコメントを付ける、といった使い方で、即時性が求められません。(また、特定のメンバーが参加してくる保証もありません) また、Yammer にもテキストメッセージやプレゼンス情報が独自に実装されていますが、今後の機能統合の可能性を考えるとこれは Lync を使っておくことをお勧めします。
Yammer のテキストメッセージとプレゼンス情報
いかがでしたでしょうか。いままで 3 回にわたり Office 365 に含まれるよく似た機能の使い分けについて解説してきました。似た機能であっても使い分けることで情報共有範囲、メンバー、即時性が異なったコミュニケーションをしたり、情報の種類やビジネスへのインパクトをもとに置き場所を決めたり、という要素を考慮する必要がある場合もあることを解説しました。実際のユーザーの皆様の利用環境を構築するにあたり、何か少しでもアイディアが提供出来たのなら幸いです。
参照