日本ガンバレ!
毎年6月と11月に世界のスーパーコンピュータの上位500システムのランキングである Top500 が発表されます。Top500 は1993年から発表されていますが、このグラフは Top500 にランクインしたシステムの数を国別にプロットしたものです。
一番大きな部分はもちろんアメリカでずっと一番多いです。日本はその上の黄土色です。1993年当初はアメリカに次ぎ大きなポーションを占めていましたが、徐々に数を減らし、今ではイギリス、ドイツに抜かれ4位です。スーパーコンピュータの数は国力に比例するものですから、このグラフを見ると最近の日本株安も理解できる気がします(私が娘をインドの幼稚園に入れているのも日本のこうした状況を意識した結果でもあります。実際世界で4番目に速いコンピュータはインドにあります。1位から3位はアメリカです)。ドイツも日本同様に少しずつシェアを下げていますが、逆に上げているのがイギリスです。 イギリスが順位を上げている理由は偏に金融機関の力です。イギリスからのランクインには金融機関が目立ちます。
実はこの金融機関が現在 High Performance Computing の世界をリードしつつあります。たとえばアメリカのゴールドマン・サックスは40,000ノードの PC クラスタシステムを持っているそうです。それ以外の名だたる金融機関は軒並み10,000ノードクラスのシステムを持っています。彼らはこうした巨大システムを利用して日々大量の計算を実施し、商品開発や投資業務、時価会計処理をしています。なぜ金融機関がこれほどまでのシステムを必要とするのか、というと現在の金融商品が極めて複雑だからで、単純に儲かっているのか損しているのか分からないものが多いからです。
たとえば今日1ドルが105円とした場合、一ヶ月後に1ドルを110円で売る権利(オプション)を1ドル当たり5銭で売ったとするとそのオプション商品は儲かるのか、損するのかはかなり複雑な計算に基づく予測が必要になります。さらにサドンデスの条件、たとえば期間中に一度でも1ドルが100円を下回った場合には権利が消滅する、というようないわゆるエキゾチック・デリバティブなどになるともっと多くの計算が必要になります。金融機関はこういう商品を開発する際にも、実際に販売した後にも、今日現在儲かっているのか損しているのかをマーケットのデータを入れながら常に計算をし続ける必要があるためにこうした大規模なシステムが必要になるのです。
しかも面白いことに金融機関にとってこうした大規模システムの投資はコストになりません。なぜなら大規模システムを持ち、たくさん計算をすればするほどより儲かる新しい金融商品を他社に先駆けて提供できるからです。なので計算機をたくさん持つ会社はどんどん儲かり、持たない会社は儲けられないということになります。
欧米、特にアメリカとイギリスの金融機関の多くはこうした大規模システムを持ってはいますが、実際に Top500 にチャレンジすることは稀です。なので、現在金融機関が持っている巨大システムでみんなが Linpack を流したら、Top500 の上位は金融機関が独占してしまうかもしれません。
翻って日本を見ると、こうした金融機関の大規模クラスタは皆無に等しいです。何度もこのブログに書いた三菱UFJ証券様のシステムが唯一と言ってもいいものです。こんなことで日本の金融機関はいいのか、やばいんじゃないのか、という危機感を当の金融機関の方々もお持ちになり、野村證券さんが音頭を取り、グリッド協議会に「金融グリッド分科会」が発足することになりました。今日はそのキックオフを兼ね、金融グリッドをテーマにしたワークショップが品川のカンファレンスセンターで行われました。
私は霞ヶ関の通産省の会議室で発足準備委員会をやっていた2002年の今頃からグリッド協議会に関わり、ずっと運営委員をしています。この2年は運営委員としてワークショップの開催を担当しているので、今回のワークショップでもアジェンダ作りをお手伝いしました。今回はまず問題を提起された野村證券の白坂様のご講演から始まり、明治大学の永原先生のアカデミックでの取り組みのご紹介、さらに三菱UFJ証券様からの事例のご報告、そしてベンダーを代表してインドのタタとデータシナプスの講演、そして最後に関係者のパネル討論という盛りだくさんの内容でした。我ながらいいアジェンダだと思います。有料にしても満席になったのではないかと思いますが、グリッド協議会のワークショップとしては過去最高に近い250名弱の方にご参加いただきました。今回初めていらっしゃる方が多く、いつものグリッド協議会と違ってダークスーツ姿の方が目立ちました。
今日のワークショップでの一番の論調は「みんなで頑張って日本をなんとか再生しようよ」というものでした。金融グリッド分科会は2月15日に第一回の会合を開き、その後2週間に一度のペースでかなり密な議論をしていく予定になっています。今日のワークショップは一般向けにオープンのものでしたが、分科会は会員限定のものです。もし興味のある方はぜひグリッド協議会にご入会いただき、ぜひ議論に参加してください。そして日本の再生へ向けてみんなで頑張りましょう!