新しい Office のタッチ対応

2012年7月18日 Posted by Gray Knowlton

 

エディターズ ノート: Windows 8 には、ハードウェア アクセラレーション グラフィックスや改良されたタッチ ターゲティングなど、アプリケーションの俊敏なタッチ操作を可能にする各種機能と、タッチ対応 Windows 8 スタイル アプリの開発を促進する新しいアプリ プラットフォームが用意されています。新しい Office ではこれらの機能を利用して、タッチベースの新しいユーザー エクスペリエンスを Windows 8 上で実現します。この記事は Clint Covington (ユーザー エクスペリエンス チーム、リード プログラム マネージャー) が執筆したものです。IE10 ユーザーの皆様から、ビデオを見ることができないとの報告をいただいております。このビデオを見ることができない場合は、Facebook の Office Next ページ (http://www.facebook.com/MicrosoftOfficeNext) をご覧ください。記事内のリンク先については、IE10 (両モード) 対応の高画質版 (YouTube の Office チャンネル,) に差し替えています。

Clint Covington

7 月 16 日、サンフランシスコにおいて、Windows 8 に対応した Office の新しいタッチ エクスペリエンスを公開いたしました。私たちが披露したのは、タッチ操作機能を最適化した OneNote 向けの新しい Windows 8 スタイル アプリと、Word、Excel、PowerPoint、Outlook、その他のデスクトップ アプリをタッチ操作に対応させるための開発チームの取り組みを紹介しました。新しい Office は、ソファーにくつろいでタブレットで操作する場合も、デスクトップでマウスとキーボードを使用する場合も、より快適なエクスペリエンスを実感できるよう設計されています。一般的な作業をより早く、円滑に、直観的に実行できるようにする一方で、高品質のドキュメントを作成するのに必要な機能も実装されています。この記事では、開発チームが何を目的とし、それをどう形にしたかを順を追って説明し、これらのエクスペリエンスをタッチ用に再創造するために使用した設計フレームワークについて説明します。

 

 

タッチ操作のビジョン

Office の次期バージョンのプランニングを開始するにあたって明らかだったのは、今後、Office をタッチ操作で使用するユーザーがかなりの数を占めるだろうということです。アプリに新しい次元を加えることのできる機会に恵まれ、私たちは大きなやりがいを感じていました。ハードウェアが急速に進化して新しい形態の PC やモバイル端末の開発が可能となり、それと共に新しい操作スタイルが生まれ、好きな姿勢で、好きな場所でアプリを使用できるようになります。もちろん、今後も多くのユーザーは Office をデスクトップやラップトップで使用し、入力操作には物理キーボードを使用することでしょう。しかし、タブレットやハイブリッド型のラップトップ/タブレット端末を使い始めるユーザーの数も増えていくはずです。そして、その使用状況は実にさまざま。あるときは、椅子の背もたれに体を預けていたり、電車やバス、飛行機の座席で前屈みになっていたり。またあるときは、ソファーでくつろいでいたり、ベッドに寝そべっていたり。立ったまま両手で端末を持って操作することや、山道を歩きながら操作することも可能です。

私たちはこれらの姿勢のそれぞれについて、どのような作業が適しているか、そして、どのような入力方法が最も適しているかを分析しました。たとえば、物理キーボードは大量の文字入力に最適です (また、ほとんどのユーザーにとって、スクリーン キーボードよりはるかに高速です)。マウスは位置を正確に示すのに適しています。そしてタッチ操作は、大量のストローク (スクローリングやズームなど) を必要とする作業に適しています。一部の姿勢、たとえば立っている状態について言えば、タッチ操作による入力が便利です (とはいえ、入力効率は机に向かって座っている場合に遠く及びません)。どの姿勢にも、どの入力方法にも、作業内容によって一長一短があります。私たちが心がけたのは、さまざまな姿勢とさまざまな入力方法を視野に入れて、Office アプリを直観的に、ナチュラルに、そして快適に使用できるものにすることです。

これと並行して、Windows についても、タッチ操作機能 (タッチ対応 PC ハードウェアに必要な新しいタッチ デジタイザー、新しいタッチ ドライバー、新しいプラットフォーム API、新しいユーザー エクスペリエンス) を実装するために多大な労力が投入されました。 このプラットフォームにより、複数のアプリケーションで自然なエクスペリエンスを実現するためのコア機能が得られ、新たな姿勢での使用が可能になりました。ちなみに、Office の新しいタッチ機能の多くは Windows 7 搭載機上でも動作しますが、Windows 8 ではその基本プラットフォームに改良が加えられているため、タッチ ターゲットの精度 (目的のボタンを正確かつ簡単にタップできること) から、画面上のボタン サイズ、タッチ フィードバックの速度と応答性など、すべての面でユーザー エクスペリエンスが格段に向上しています。

Office の次期バージョンを対象としたタッチ機能の開発は 2 つの方向で行われました。その 1 つが、Windows 8 の新しいユーザー エクスペリエンスに特化したアプリ (OneNote、Lync) の新バージョンの開発です。これについては、タッチファーストの新バージョンを設計するために、あえて一から開発が行われました。もう 1 つの方向は、Office アプリのお馴染みのデスクトップ バージョンをすべてタッチ対応にするというものです。これらの Office アプリはマウスとキーボードを第一に設計されたものであり、慣れ親しんだ機能やレイアウトがそのまま踏襲されていますが、そのユーザー エクスペリエンス全体でタッチ操作が可能になっています。この二本立てのアプローチのおかげで、タッチ機能を取り込むために一から開発された新しいエクスペリエンスと Windows 8 の新しいエクスペリエンスが密に統合され、新たに操作方法を覚えることなく、タッチ ユーザーインターフェイスを備えた端末で Office のパワーをフルに引き出すことができます。

私たちのビジョンは、すべての Office アプリを対象に広範な変更を加えるというものでした。そこでまず、各アプリで特によく使用される操作を特定し、その知見に基づいて開発を進めるという手順を踏みました。その例として挙げることができるのが、メール操作、インスタント メッセージの送信、ドキュメントの閲覧、スプレッドシートの編集、スライドのプレゼンテーションなどです。これらの操作を、タッチ機能だけで、あるいはタッチ操作とマウス、キーボードの組み合わせで快適に行えるようにしたい。それが私たちの願いでした。

 

 

タッチ操作のガイドライン

次に私たちが手掛けたのが、Office 全体でタッチ操作を実現するために必要だった共通のフレームワークの構築です。現在のエクスペリエンスと我々が目指しているエクスペリエンスを比較し、その結果として以下の領域に労力を集中させることになりました。

  • タッチ操作の応答性
  • ターゲティング
  • テキストとオブジェクトの選択
  • タイピング
  • コマンドの実行

これらの各領域について詳細なガイドラインを定め、これだけは必ず実現するという最低目標を掲げました。そして、内部のタッチ言語をマイクロソフト エクスペリエンスの延長線上ですぐに使いこなせるものにするため、社内の総力を結集しました。操作シナリオを想定し、その 1 つ 1 つについてスコアカードを作成し、一貫性のある、俊敏に応答する快適な (ユーザーが手助けなしに安心してタッチ操作をできる) エクスペリエンスを実現するために必要な開発作業の領域を特定しました。以下に、メールの操作シナリオに関して作成した初期のスコアカードの例を示します。

では、これらのガイドラインについて詳しく見ていきましょう。

タッチ操作の応答性

必要なのは、何かをタッチしたらそれが瞬時に応答するということです。パンやズームなどの操作をしたら、コンテンツがユーザーの指先に「くっついて」動くようにしなければなりません。フリックしたときは慣性運動し、画面の端に到達したときは跳ね返って見えるようにする必要があります。指をドラッグしたら写真のサイズが瞬時に変わり、テキストがその回りにリフローするようにして、アクションの表示に物理的リアリティーを持たせる必要があります。

コンテンツが指先にくっついて移動するエクスペリエンスは、コンテンツをイメージとして再レンダリングし、アニメーションと共に画面内を動き回らせるコンポジッターで表現しますが、これを使用するためにドキュメント サーフェスの大部分をリファクタリングする必要がありました。また、GDI をハードウェア アクセラレーション グラフィックスに変更しました。その結果得られたのが、ナチュラルに、そして俊敏に応答するエクスペリエンスです。以下にいくつか例を示します。

 

ターゲティング

ターゲティングとは、目的のコンテンツを正確にタッチできることを意味します。これは完全に物理サイズの問題です。指はマウス ポインターやペン先と比べるとはるかに太いため、画面上では UI 要素を物理的に大きなサイズにしないと容易にタッチすることはできません。このターゲット サイズについては、Windows チームによる徹底的なリサーチによって作成された開発ガイドラインがあり、今回の開発でも終始その規定に従いデザインを決定しました。

OneNote および Lync 向けの新しい Windows 8 スタイル アプリは一から設計されているため、ユーザー インターフェイスのどのセクションを見ても、狙った場所をすぐにタッチすることができます。デスクトップ アプリでは、多くのヒット ターゲットがマウスおよびキーボードの使用を前提に設計されているため、このガイドラインを順守することができず、サイズをいかに変更すべきかを模索する必要がありました。サイズを大きく変更する必要のあったユーザー インターフェイス要素は、次の 2 種類に分けられます。

  • ユーザー インターフェイスの固定要素。クイック アクセス ツールバー (QAT)、ステータス バー、リボン、Outlook のフォルダーなど、常に表示されている要素がこれに該当します。
  • ユーザー インターフェイスのコンテキスト依存要素。操作状況によって表示が異なります。コンテキスト メニュー、ミニバーなどがこれに該当します。

 

ユーザー インターフェイスの固定要素

ユーザー インターフェイスの多くの固定要素は、タッチ可能な最小サイズを大きく下回っており、QAT の [保存] ボタンなど、よく使用するコマンドを高精度でタッチすることは不可能でした。そこで私たちが追加したのが、固定 UI のサイズを変更するためのタッチ モードという新機能です。タッチ モードは、正しく設定されたタブレット端末であれば自動的に起動し、QAT、リボンのタブのサイズを変更し、リボン内の小さなボタンの周りのスペースを広げ、ステータス バーの高さを上げます。さらに、Outlook のタッチ トリアージ アクション バーをオンにし、Outlook のフォルダーを拡大できるだけのスペースを追加します。以下に、タッチ モード機能のオン/オフによる Word のリボンの違いを示します。

タッチ モード オフ:

 

タッチ モード オン:

タッチ モードを手動でオンにするには、QAT のオーバーフロー領域をクリックし、[タッチ モード] アイコンを選択します。以後、このアイコンは QAT に表示され、タッチモードのオン/オフを簡単に切り替えることができます。

  

 

ユーザー インターフェイスのコンテキスト依存要素

Office の多くのコンテキスト依存 UI 要素 (メニュー、コンテキスト メニュー、カラー ピッカー、ミニツール バーなど) についても、選択対象は小さいのが実情です。コンテキスト依存 UI はユーザーがアクションを起こさない限り表示されないため、アクションがタッチであるかマウスのクリックであるかに基づいて、タッチ版の UI とマウス版の UI を切り替えるという手法を取ることにしました。このため、タッチモードのオン/オフに関わらず、コンテキスト依存の UI は常に正しいサイズで表示されます。たとえば、タッチ操作によりコンテキスト依存メニューが表示された場合、メニュー項目の間隔を拡大して簡単にタッチできるようにします。以下に、マウス操作の場合とタッチ操作の場合とで、カラー ピッカーの表示がどう異なるかを示します。

       

形状、グラフ、写真については、ハンドルのサイズを拡大し、Windows のタッチ ターゲティング API を使用して、オブジェクトの選択とサイズ変更が容易に行えるようにします。

    

Windows 8 の新しい API は、画面に触れた指の形状と最初の接触ポイントを検出します。最初の接触ポイントがハンドルの内部でなかった場合は、指がハンドルに重なっているか、そして、選択が正しく行われているかを検出します。その結果、タッチの精度が向上し、ユーザーのミスタップ率が低下します。これらのタッチ ターゲティング API が Office 全体で使用されているおかげで、いい加減または不正確なタッチでも正確に特定され、ユーザーは安心してタッチ操作を行うことができます。詳細については、Windows 8 エンジニアリング ブログの投稿記事「タッチ操作対応のハードウェアと Windows 8」を参照してください。

ドラッグでオブジェクトの位置を変更する

ターゲティングの特殊な例として、オブジェクトをつかんでドラッグするという操作が挙げられます。オブジェクトを別のオブジェクトの上までドラッグするのは、たとえば、Outlook で電子メールを任意のフォルダーまでドラッグするのは、さほど難しい作業ではありません。単にフォルダーをタップする場合と同等または若干それを上回る程度の難易度で済みます。しかし、オブジェクトをドラッグして移動させるとなると、マウス操作と同程度の精度を得るのは困難です。この問題に対処するために追加したのが、ガイドラインとスナップ ポイントです。この 2 つは、写真や形状、その他のオブジェクトを移動またはサイズ変更する際に自動的に表示されるので、オブジェクトを余白や他のオブジェクトに合わせて配置することが簡単にできます。

 

 

テキストとオブジェクトの選択

Office の最も基本的な操作の一つが、テキストやオブジェクトの選択です。マウスとキーボードを使用すると、狙った対象を簡単かつ正確に選択し、Shift キーや Ctrl キーで機能を切り替えることができます。指先は、これらの操作を効率的に行うために必要な精度に欠けています。そこで私たちは Windows チームの協力を得て、テキストとオブジェクトの一連の選択パターンを調べ上げ、

Word、PowerPoint、Excel、OneNote、Visio、Lync および Outlook のメッセージ用に新しいテキスト選択ハンドルを追加しました。以下に示すのは、Word と Excel での例です。

これらは、モダン ブラウザなどの Windows 8 対応アプリで見られるものと同じテキスト選択ハンドルです。

複数のオブジェクトを選択するには、Windows のクロススライドのガイドラインに従います。複数のスライドを選択し、ドラッグ アンド ドロップで配置を変更します。PowerPoint では、1 本の指を画面に触れたまま、他の形状や写真をタップすることで、複数のオブジェクトを簡単に選択できます。

 

 

タイピング

Office の多くの操作シナリオの中でよく行うのがタイピングです。Windows 8 では、スクリーン キーボードまたは仮想キーボードの開発に多大な労力が投入されています。OneNote および Lync 向けの新しい Windows 8 スタイル アプリでは、仮想キーボードの表示/非表示は Windows API で自動制御します。

この他、デスクトップ アプリについては、次の問題への対策も必要でした。

  • 仮想キーボードが必要な時に自動的に表示されない。
  • 仮想キーボードがタイピング中の文字に重なることがある。
  • 仮想キーボード表示中は、使えるスペースが狭くなる。

仮想キーボードの起動

Office 2010 および Windows 7 では、Windows タスク バーのキーボード アイコンをクリックして仮想キーボードを手動で起動する必要がありました。Windows 8 では、新しいデスクトップ API が追加され、Office アプリで仮想キーボードの表示/非表示が自動制御されるようになっています。

仮想キーボードがタイピング中の文字に重なる

仮想キーボードが表示され、それがコンテンツや入力中の領域に重なってしまうことほどイライラすることはありません。しかも、タイピング中にカーソルがキーボードの下でスクロールしようものなら、フラストレーションは頂点に達します。Windows 8 には、仮想キーボードの表示/非表示切り替え、および画面上の表示位置をアプリに通知する新しいデスクトップ API が追加されています。この通知を受けて、アプリ側ではコンテンツを邪魔にならないところまでスクロールし、タイピング中にカーソルが見えるようにします。

仮想キーボード表示中の作業スペース

リボンを展開し、仮想キーボードが表示されていると、コンテンツを表示する作業スペースが狭くなることあります。この状態に陥るとユーザーは圧迫感に襲われ、イライラし始めます。この問題を解決するため、タブレット端末上ではリボンを既定で折りたたむようにしました。これにより、ユーザーには広い作業スペースが与えられます。リボンのインタラクション モデルには数多くの細かな改良を加え、折りたたんだ状態での操作性を向上させました。同時に複数のコマンド ([太字]、[斜体]、[下線] など) を実行できるようにもしています。そして、単独で終わることが多いコマンド (表の挿入など) については、実行すると同時に画面から消えるよう工夫しています。

全画面表示機能も用意しています。全画面表示ではリボンとステータス バーが非表示になるため、貴重なコンテンツ スペースからクロムが取り去られ、ユーザーはコンテンツに集中し、より多くのテキスト行またはセル行を一度に見ることができます。全画面表示の詳細については次の記事に譲ります。

全体的なタイピングのニーズを抑える

仮想キーボードは物理キーボードよりタイピング効率が劣ります。私たちが想定した多くのシナリオと新しい操作姿勢では、作業を完了するために仮想キーボードを使用しなければならない場面もあり、仮想キーボードへの依存度をできる限り軽減しようと考えました。

一般的なパターンとしては、提案メニューと、最近使用したドキュメントのリストで過去の入力内容を提示することが挙げられます。長年にわたって、アプリは最近開いたドキュメントへのパスを記憶しています。これは、ユーザーが主に 1 台のコンピュータを使用していたころはうまく機能していました。しかし、スマート フォン、タブレット、クラウドを使用していると、ユーザーは複数のドキュメント、複数のマシンに、自宅や職場からアクセスする必要があります。Office サービスに接続していると、ドキュメントとよく使用する位置情報の MRU では、ユーザーが使用するすべてのデバイスを対象にローミングが実行されます。これにより、覚えづらい時代遅れのファイル パスを入力しなくて済むようになり、ファイルのオープンや保存で発生するトラフィックを大幅に削減することができます。

Excel では、新たに追加されたフラッシュ フィル機能を使用すると、シートの入力内容に基づいて候補の値が自動的に入力され、時間の節約につながります。その使用例を以下に示します。

 

 

コマンドの実行

タッチ操作で最後に注目すべき領域がコマンド エクスペリエンスです。

デスクトップ アプリでは、今回私たちが想定した作業シナリオを、リボン、バックステージ、コンテキスト メニュー、ミニバーに頼ることなく実行するのはほぼ不可能でした。しかも、カスタマ エクスペリエンス向上プログラムの結果から、多くのコマンドがキーボードで実行されていることがわかっています。使用頻度の高い [切り取り]、[コピー]、[貼り付け]、[削除] などのコマンドが、アプリのコマンド インターフェイスではなく、キーボード経由で繰り返し実行されているのです。以下に、コマンドライン エクスペリエンスの改善に向けて私たちが策定したガイドラインの一部を紹介します。

  • 一般的なコマンドは、簡単に見つかりすぐに使用できるようにする
  • タッチ操作とマウス/キーボード操作の間で、コマンドの配置に一貫性を持たせる
  • 使用頻度の高いキーボード アクション ([切り取り]、[コピー]、[貼り付け]、[削除]) は、簡単にアクセスできるようにする
  • ユーザー エクスペリエンスに親しみを持たせ、タッチ操作に対応させる

想定したシナリオを評価したところ、そのほとんどは一部のコマンドだけで達成できることがわかりました。Office をタッチ操作で使用するユーザーが増えると、机に向かってマウスとキーボードを操作するだけではない、新たな作業スタイルが確立されることでしょう。多くのコンテキスト (テキスト、写真、形状、表などが選択された状態) においても、一部のコマンドで操作の大部分が行われることがわかっています。先に説明したように、画面の垂直方向の領域は貴重な存在となっています。これらすべての知見から、私たちは、使用頻度の高いコマンドのアクセス性を向上させる一方で、画面の垂直方向の領域をコンテンツ用に可能な限り確保するという結論に達しました。

さらに、Windows 8 向けの新しいアプリの設計段階では、開発中のその他の Windows 8 アプリの目的と設計言語との一貫性を保ち、作業に適したエクスペリエンスをユーザーに提供することを目指しました。最も大切なのはユーザーに作業に集中してもらうことであり、Office のユーザー インターフェイスからは決別しようと考えています。Windows 8 は設計上、アプリが画面上の領域を 1 ビット単位で制御できる構造となっており、その作業スペースはユーザーに明け渡たされるべきものです。これにより、読む、タイピングする、コンテンツをいろいろ動かして見るといった作業に必要な空間的余裕が得られます。アクションを起こす必要があるとき、実行すべきコマンドは、単にクリック、タップ、またはスワイプすることです。

ミニ ツール バー

Office 2007 で導入されたミニ ツール バーは、テキストまたは特定のオブジェクトを選択しているときに表示される小さなコマンド ストリップです。ミニ ツール バーの目的も、よく使用するコマンドに効率的にアクセスできるようにすることです。次期 Office では、このミニ ツール バーを拡張してタッチ操作をサポートしています。

デスクトップ アプリのミニ ツール バーについては、ユーザーが選択中の項目 (テキスト、セル、イメージ、図形など) をタップすると表示されるように仕様を変更しています。[貼り付け]、[切り取り]、[コピー]、[削除] など、よく使用するキーボード コマンドがミニ ツール バーに追加されているので、バーチャル キーボードにアクセスする回数が減り、作業目的をより早く達成することができます。以下に示すのは、写真編集時に表示されるミニ ツール バーです。

第 2 レベルのコマンドは、ミニ ツール バーからコンテキスト メニューとしてドロップ ダウン表示されます。ここに配置されるコマンドの使用頻度はあまり高くありませんが、マウスやキーボードでよく実行する右クリック アクションをタッチ操作で代行できるというメリットがあります。コンテキスト メニューには、ミニ ツール バーに表示されているコマンド ([切り取り]、[コピー]、[貼り付け] など) が複製されて表示されるということはありません。以下に示すのは、同じ写真でコンテキスト メニューが展開されているときの状態です。

インキャンバス コマンド

他のユーザーとのコミュニケーションは、タブレット端末での最重要シナリオの 1 つです。メールについては、特定のコマンドだけで操作の大半を占めることがわかっています。よく使用するコマンドの例として、[返信]、[全員へ返信]、[転送]、[フォルダへ移動]、[フラグの設定]、[開封済みにする] が挙げられます。

当初、これらのオプションはメール メッセージ一覧に配置していました。しかし、Outlook をタブレット端末で使ってみると、それが決して使いやすい配置ではないことがわかりました。前屈みになって端末を両手で持っていると、画面中央の [削除] ボタンにアクセスするのが極端に難しかったのです。この姿勢のときは、親指を使って画面の端に沿って目的の領域を探す方が格段に簡単です。以下に Outlook のサム バー操作の様子を示します。

 

リング メニュー

指先に表示されるツール、それがリング メニューの目指す位置付けです。リング メニューは、Windows 8 対応の新しい OneNote アプリでの入力時または編集時に表示されます。編集時に最もよく使用されると思われるコマンドが、対象コンテンツのすぐ近く表示されるのです。作業中、コマンドはメニューの後ろにしまい込まれています。そして、たとえば、テキストのフォーマットを設定したくなったら、このリング メニューと必要なコマンドをクリックまたはタップしさえすればよいのです。

 

リング メニューは、使用頻度の高いコマンドをすぐに使用できるようにするという目的でデザインされています。その他のコマンドが必要な場合は、メニューの中央部から外側に向かって指をスワイプするか、メニューの周りの任意の矢印をタップしてください。たとえば、書式設定用のその他のコマンドは、太字の周りに表示されます。

 

コマンドがしまい込まれているときは、リング メニューの表示内容は実行中の作業内容によって異なります。たとえば、入力中に表や箇条書きを挿入する場合は、次の項目が表示されます。

また、画像を処理している場合は、次の項目が表示されます。

各メニューの下にはそのときに必要なコマンドまたはツールが格納されています。最もよく使用する 8 つのアクションについては、メニューを展開する必要さえありません。必要なコマンドの方向にスワイプしさえすればよいのです。たとえば、一部のテキストを選択している状態で、折りたたまれているリング メニューを右にスワイプすると太字コマンドが、上にスワイプするとコピー コマンドが、左にスワイプするとやり直しコマンドが表示されます。いわば、キーボード ショートカットのタッチ操作版です。このスワイプ操作は、作業中のコンテンツの邪魔をすることなく、タッチ操作をより早く、より滑らかに実行するための方法の 1 つにすぎません。

 

アプリ バー

他のすべての Windows 8 スタイル アプリと同様、Lync および OneNote の画面下部にはページ間を移動するためのアプリ バーを配置しています。画面の端から内側に向かってスワイプするか、右クリックする (または Windows キー + Z を押す) と、アプリ バーがスライドして現れます。

この OneNote のスクリーンショットでは、前のノート/次のノートに移動すること、ノートブックやページのリストを呼び出すこと、新しいページを追加すること、そしてアプリを使用した感想を開発チームにフィードバックすることができます (ぜひご協力ください)。

このアプリ バーの内容は、何を右クリックしたかによって異なります。たとえば、OneNote ノートブック内のセクションを右クリックした場合は、アプリ バーの左側に追加のコマンドが表示され、セクション名の変更、セクションの削除、セクションへのリンクのコピーができるようになります。

 

まとめ

Office をバスや飛行機で移動中でも、ソファーの上でも、ホテルのロビーでも使用できるようにする、そんなまったく新しい使用方法の開発に携わる機会に恵まれて、私たちは大きなやりがいを感じています。普段よく使用する作業をタッチ操作で、より早く、円滑に、直観的に実行できるようにする一方で、高品質のドキュメントを作成するのに必要な機能も実装しました。私たちが楽しみながら Office を開発したように、ユーザーの皆さんにも新しい Office の操作感覚をお楽しみいただければ幸いです。一部のタッチ操作については若干改良すべき点が残っていますが、ぜひともプレビューをダウンロードし、OneNote MX をインストールして、使用したご感想をお聞かせください。皆様のコメントを歓迎します。ご協力に感謝します。