メールボックスのサイズ制限に気をつけましょう

こんにちは。Exchange サポートの河本です。
日々弊社 Office 365 サービスをご利用頂きありがとうございます。
長らく Office 365 を利用されているユーザー様でメールボックスがサイズ制限を超過してしまい、[削除済みアイテム] フォルダーからメールを完全に削除できなかったりサイズ制限越えの警告メッセージを受信する問い合わせを頂くことがあります。
今回は長期に渡って Office 365 を利用する場合に、メールボックスのサイズ制限に抵触しないように運用する方法をご紹介します。

 
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格納域のサイズ制限について
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各ユーザー メールボックスのサイズ制限は Exchange Online (ExO) へリモート PowerShell 接続し、Get-Mailbox -Identity "<メールボックス名>" |fl *Quota* を実行することで簡単に確認できます。

出力例)
ProhibitSendQuota : 99 GB (106,300,440,576 bytes)
ProhibitSendReceiveQuota : 100 GB (107,374,182,400 bytes)
RecoverableItemsQuota : 100 GB (107,374,182,400 bytes)
RecoverableItemsWarningQuota : 90 GB (96,636,764,160 bytes)
CalendarLoggingQuota : 6 GB (6,442,450,944 bytes)
UseDatabaseQuotaDefaults : False
IssueWarningQuota : 98 GB (105,226,698,752 bytes)
RulesQuota : 64 KB (65,536 bytes)
ArchiveQuota : 100 GB (107,374,182,400 bytes)
ArchiveWarningQuota : 90 GB (96,636,764,160 bytes)
 
ハイライトした箇所に着目頂きたいサイズ制限となりますが、その前に受信トレイ、予定表、送信済みアイテムなどの既定フォルダーが格納されている領域 (1) と "回復可能なアイテム" フォルダーと呼ばれる特殊な領域 (2) がある点をご留意ください。(1) の領域では ProhibitSendQuota (送信制限サイズ制限)、ProhibitSendReceiveQuota (送受信制限サイズ制限)、ArchiveQuota (アーカイブ メールボックス サイズ制限)、ArchiveWarningQuota (アーカイブ メールボックスサイズの警告閾値) が定義されており、これらの制限値に達すると制限値に達している警告メッセージを受信したり、メールの送受信できない問題が発生します。(2) の領域はRecoverableItemsQuota ( "回復可能なアイテム" フォルダーのサイズ制限) 、RecoverableItemsWarningQuota ([回復可能なアイテム] フォルダーの警告閾値) が定義されており、これらに制限値に達すると制限値に達している警告メッセージを受信したり、 Outlook や Outlook on the Web (Ootw) からアイテムを完全に削除できない ("削除済みアイテム"フォルダーを空にできない) 問題が発生します。

"回復可能なアイテム" フォルダーとは何?という方は以下の TechNet 情報や Exchange ブログ記事をご参考ください

Title: Exchange 2016 の回復可能なアイテム フォルダー
Url: https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/ee364755(v=exchg.160).aspx

Title: Exchange Online でのアイテムの保持機能と削除された場合のアイテムの動き
Url: https://blogs.technet.microsoft.com/exchangeteamjp/2016/04/24/exchange-online-6/

お問い合わせとして多いのが "回復可能なアイテム" フォルダーのサイズ制限に抵触する問題ですので、後半で紹介する対処策例も"回復可能なアイテム" フォルダーに焦点を当てております。

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現在の使用サイズの確認
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プライマリ、アーカイブ メールボックスでそれぞれ以下のコマンドを実行することで、上記の 2 種類の領域のサイズを確認できます。

-プライマリ メールボックスの場合
Get-MailboxStatistics -Identity "<該当メールボックス名>" |fl Total*

-アーカイブ メールボックスの場合
Get-MailboxStatistics -Identity "<該当メールボックス名>" -Archive |fl Total*

以下が出力結果例ですが、TotalItemSize が領域 (1) で占有されているサイズで、 TotalDeletedItemSize が 領域 (2) で占有されているサイズとなります。

TotalDeletedItemSize : 19.19 MB (20,125,445 bytes)
TotalItemSize : 15.15 MB (15,884,986 bytes)

上記の確認結果で、前述の格納域のサイズ制限に達しているのか否かを確認できます。

 
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対処策
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上記の使用サイズの確認結果で、対処策としては多く分けて 2 パターンありますので、パターンごとにご案内します。

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1) アーカイブ メールボックスが利用できる場合
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プライマリ メールボックスの領域のみサイズ制限に抵触しているのであれば、アーカイブ メールボックスにアイテムを移動させるのが簡単な方法です。

 1-A. アーカイブ メールボックスの有効化
 1-B. 保持タグ/保持ポリシーの作成/適用

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1-A. アーカイブ メールボックスの有効化
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アーカイブ メールボックスが有効化されていない場合は、以下の公開情報をもとにアーカイブメールボックスを有効化します。

Title: Exchange Online のアーカイブ メールボックスを有効または無効にする
Url: https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/jj984357(v=exchg.150).aspx

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1-B. 保持タグ/保持ポリシーの作成/適用
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既定では "Default MRM Policy" という保持ポリシーが各メールボックスに適用されており、"Default MRM Policy" にリンクされている保持タグに従ってアイテムが整理されます。
"Default MRM Policy" について以下の技術情報をご参考ください。

Title: Exchange Online および Exchange Server の既定のアイテム保持ポリシー
Url: https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/dn775046(v=exchg.150).aspx

"Default MRM Policy" は適用されているものの、格納域の制限に抵触したという場合は個別にアイテムをアーカイブに移動する保持タグ/保持ポリシーを作成し、対象メールボックスに適用する必要があります。以下の例ではプライマリ メールボックスの "回復可能なアイテム" フォルダー内のアイテムで 1 日より古いアイテムをアーカイブ メールボックス上の "回復可能なアイテム" フォルダーに移動する例です。

1-B-1. 以下のコマンドを実行し、作成から 1 日経過したアイテムをアーカイブ メールボックスに移動する保持タグを作成します。

 New-RetentionPolicyTag "MoveToArchiveIn1day" -Type RecoverableItems -RetentionAction MoveToArchive -AgeLimitForRetention 1

 ※設定を初めて変更する場合には、Enable-OrganizationCustomization を実行するよう促すメッセージが出力される場合がございます。
 その際には、メッセージの指示に従い、Enable-OrganizationCustomization を実行頂ければと存じます。

1-B-2. Exchange 管理センターの [コンプライアンス管理] - [アイテム保持ポリシー] より、上記で作成した保持タグを含むよう、新規でアイテム保持ポリシーを作成します。
 その他の保持タグについては必要に応じて既定のポリシーに含まれる保持タグと同一のタグを含めていただければと存じます。

 詳細な作成方法については以下の公開情報をご参照ください。

 Title: アイテム保持ポリシーの作成
 URL: https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/jj150573(v=exchg.150).aspx
 項目: 手順 2:アイテム保持ポリシーを作成する

1-B-3. 以下のコマンドを実行し、上記 B-2 で作成したアイテム保持ポリシーを適用します。

 Set-Mailbox "user01@contoso.com" -RetentionPolicy <上記 2 で作成したポリシー名>

1-B-4. 以下のコマンドを実行し、管理フォルダーアシスタントを明示的に実行します。

 Start-ManagedFolderAssistant "user01@contoso.com"

 ※新規にポリシーを適用した場合、アイテム数やアイテム サイズによっては全てのアイテムがアーカイブへ移動されるまでに数日程度時間を要する場合がございます。
  アイテムの移動に時間がかかっている場合は、後述の “MRM の動作確認” にて処理状況を確認し、MRM が全く動作してない状況の場合はコマンドを再度実行ください。

1-B-5. 以下のコマンドを実行して、対象メールボックスの "回復可能なアイテム" フォルダーのサイズを確認します。

 Get-MailboxStatistics -Identity "<該当メールボックス名>" |fl Total*

 TotalDeletedItemSize のサイズが減少していることを確認します。

 以下のコマンドを実行することで "回復可能なアイテム" フォルダー内の各サブフォルダーのサイズも確認することができます。

 Get-MailboxFolderStatistics "user01@contoso.com" -FolderScope RecoverableItems | FT FolderPath, FolderSize, FolderAndSubfolderSize

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2) アーカイブ メールボックスが利用できない場合
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プライマリ メールボックスの格納域の制限に抵触しているが、アーカイブ メールボックスが利用できないまたはアーカイブ メールボックスの格納域の制限にも抵触している場合は、
アイテムを削除する必要があります。以下の例ではSearch-Mailbox コマンドでプライマリ メールボックスの "回復可能なアイテム" フォルダー内のアイテムを削除する方法です。

2-1. Search-Mailbox のコマンドを 実行する為には、あらかじめ権限が必要です。以下のコマンドを実行し、実行するユーザーに権限を与えます。

 例: Add-RoleGroupMember -Identity "Discovery Management" -Member <コマンド実行ユーザー名>

2-2. Search-mailbox コマンドを実行し、回復可能なアイテムをバックアップします。

 コマンド実行例: 2013/10/25 から 2013/10/28に受信した user01 の回復可能なアイテムを検索し、管理者 (admin) のフォルダーの RecoverableItems というフォルダー配下に検索結果を格納します。
 *指定した名前のフォルダーが無い場合は、コマンド実行により作成されます。

 例: Search-Mailbox user01 -SearchDumpsterOnly -TargetMailbox admin -TargetFolder RecoverableItems -LogLevel Full -SearchQuery 'Received:10/25/2013..10/28/2013'

<留意点>
エクスポート対象アイテムが 100 GB を超えるような場合は、全てのアイテムをエクスポートすると、エクスポート先のフォルダーの上限 50 GB を超過してしまう懸念があります。
そのため、日付等の条件でエクスポートするアイテムを限定して実施ください。

- 参考情報
Title: Search-Mailbox
URL: https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/dd298173(v=exchg.160).aspx

2-3.Outlook on the web (Ootw) または Outlook にて出力先のメールボックス (上記例では admin) にログインし、回復可能なフォルダー内のアイテムが存在することを確認します。
2-4. 2-2 のコマンド実行完了後、対象ユーザーの訴訟ホールドまたはインプレースホールドを解除します。
*訴訟ホールドを解除する場合は、以下のようにコマンドを実行します。

 例: Set-Mailbox <該当メールボックス名> -LitigationHoldEnabled $false

2-5. Search-mailbox コマンドによりアイテムの削除を行う DeleteContent パラメーターを利用するには、コマンドを実行するユーザーに対して、管理役割 (Mailbox Import Export) を付与します。

 例: New-ManagementRoleAssignment -Name "testMailboxImportExport" -Role "Mailbox Import Export" -User admin@contoso.onmicrosoft.com

2-6. Powershell を一度終了し、Exchange Online へ再接続した後、2-2 のコマンドより同一のクエリ条件を指定した上で、Search-Mailbox コマンドにて DeleteContent を指定し、該当の検索対象のアイテムを削除します。

 例: Search-Mailbox user01 -SearchDumpsterOnly -SearchQuery 'Received:10/25/2013..10/28/2013' -DeleteContent

2-7. 以下のコマンドを実行して、対象メールボックスの "回復可能なアイテム" フォルダーのサイズを確認します。

 Get-MailboxStatistics -Identity "<該当メールボックス名>" |fl Total*

 TotalDeletedItemSize のサイズが減少していることを確認します。

 以下のコマンドを実行することで "回復可能なアイテム" フォルダー内の各サブフォルダーのサイズも確認することができます。

 Get-MailboxFolderStatistics "user01@contoso.com" -FolderScope RecoverableItems | FT FolderPath, FolderSize, FolderAndSubfolderSize

 
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MRM の動作確認
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上記の保持ポリシーを使用する対処策を実施する場合は、手順 1-B-4 のように管理フォルダー アシスタントによってアイテムが移動される必要があります。対処策を実施したが、サイズが小さくならないという場合は、以下のコマンドを実行して管理フォルダー アシスタントが正しく動作しているか確認してみましょう。

以下のようにコマンドを実行することで管理フォルダー アシスタントで何かエラーが出ていないかどうか確認できます。何も表示されない場合は、エラーなく正常に動作していると判断できます。

Export-MailboxDiagnosticLogs "<該当メールボックス名>" -ComponentName MRM

Title: Export-MailboxDiagnosticLogs
Url : https://technet.microsoft.com/ja-jp/library/ff459236(v=exchg.160).aspx

更に細かい情報を確認したい場合は、以下のようにコマンドを実行します。

$log = [xml]((Export-MailboxDiagnosticLogs "<該当メールボックス名>" -ExtendedProperties).MailboxLog)
$log.Properties.MailboxTable.Property

出力結果の ELC (Email life-cycle assistant) 関連のフィールドで管理フォルダー アシスタントに関する処理状況が確認できます。

Name Value
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DatabaseSchemaVersion 160
StorageQuotaLimit 102760448
SystemMessageSize 8848582
PersistableTenantPartitionHint 0x282341995672FB4B8C65F63449BB482A
--------------------<中小略> -------------------------------
ElcLastRunTotalProcessingTime 1919
ElcLastRunSubAssistantProcessingTime 545
ElcLastRunUpdatedFolderCount 8
ElcLastRunTaggedFolderCount 0
ElcLastRunUpdatedItemCount 0
ElcLastRunTaggedWithArchiveItemCount 0
ElcLastRunTaggedWithExpiryItemCount 0
ElcLastRunDeletedFromRootItemCount 0
ElcLastRunDeletedFromDumpsterItemCount 0
ElcLastRunArchivedFromRootItemCount 0
ElcLastRunArchivedFromDumpsterItemCount 0
ELCLastSuccessTimestamp 2017/02/08 11:39:36
ElcFaiSaveStatus SaveSucceeded
ElcFaiDeleteStatus DeleteNotAttempted
--------------------<以下省略> -------------------------------

ちょっと長文になりましたが、今回のご案内は以上となります。
今後も当ブログではお客様が Exchange Online を快適に利用できるための有益な情報を提供していきますので、次回の投稿をお楽しみに!

 
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