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Exchange Server 2016 のプレビュー版を発表

(この記事は 2015 年 7 月 22 日に Office Blogs に投稿された記事 Announcing Exchange Server 2016 Preview! の翻訳です。最新情報については、翻訳元の記事をご参照ください。)

今回、Exchange Server 2016 プレビュー版の提供開始が発表されました。こちらのページ (英語) からダウンロードできます。Ignite では Exchange Server 2016 をご紹介 (英語) し、一部機能のデモを披露しましたが、その Exchange シリーズの最新製品をインストールして実際にお使いいただけるようになります。今年中に予定されている最終リリースまでにさらなる改善を加えられるように、ぜひ皆様のご意見をお聞かせください。

今回のバージョンの Exchange は、クラウド環境から誕生した特別なものです。メールボックスのストレージといった中核的な部分から Outlook の Web UI といった表面的な部分まで、Exchange 2016 に備わった各機能は、Office 365 の何百ものメールボックスで既に使用されています。この数か月間、開発チームではこれらの機能をパッケージ化し、オンプレミス製品として提供するために取り組んできました。今回のプレビュー リリースは、開発プロセスにおける大きなステップの 1 つであり、全世界の Exchange コミュニティの皆様にご協力いただけることを嬉しく思っています。

以下の Office Mechanics のビデオでは、Greg Taylor と Jeremy Chapman が Exchange 2016 の新機能について IT 関連機能を中心にご紹介していますので、まずこちらをご覧ください。

[View:https://youtu.be/ax-QZKA7laE:0:0]

ここからは、プレビュー版で強化された主な機能について説明します。これらの機能強化はすべて、マイクロソフトが Exchange を Office 365 で大規模に可用性の高い方法で運用する中で培ってきた経験に基づいて実施されたものです。マイクロソフトでは、クラウド環境で使用されているこれらのテクノロジをオンプレミス環境にも提供することが不可欠であると考えています。

アーキテクチャを単純化

Exchange 2016 のアーキテクチャは Exchange 2013 のアーキテクチャを進化させたもので、Exchange 推奨アーキテクチャのベスト プラクティスが反映され、Office 365 での Exchange の展開方法がそのまま採用されています。また、クライアント アクセス サーバーとメールボックス サーバーの役割がまとめられ、Exchange 環境を構築するための標準的なビルディング ブロックが提供されます。Exchange 2013 との共存も簡略化され、名前空間の計画が簡単に作成できるようになります。

信頼性を向上

メールを常に使用可能な状態に保つための作業は、IT 担当者の業務の中でも特に注目されやすいため、マイクロソフトでは Exchange の信頼性を高めて担当者の負担を軽減できるように取り組んでいます。Exchange 2013 では、Office 365 で得られた経験を基に、累積更新プログラムを通じて信頼性やパフォーマンスに関する修正や機能強化を多数実施してきました。Exchange 2016 にはこれらの改善点がすべて組み込まれています。しかし、それだけではありません。

Exchange 2016 のフェールオーバーは、データベースのパッシブ コピーを読み込む機能が導入されているため、Exchange Server 2013 よりも 33% 高速化されています。また、既定で再生ラグ マネージャーが有効化され、十分なデータベース コピーが使用できない場合はレプリケーション ログが自動的に再生されます。

今回のバージョンでは従来の自動修復機能に加えてデータベースの整合性検出機能が実装されるため、破損するおそれのあるデータベース インスタンスが事前対応的に検出され、ユーザーが何らかの異変を感じるよりも前に問題を解決できるようになります。また、Exchange の運用を容易にするために、PowerShell に Get-MailboxServerRedundancy という新しいコマンドレットが追加されます。これはハードウェア修復の優先順位付けとアップグレードの際に役立ちます。

Web 版の Outlook を刷新

マイクロソフトは、最高クラスの Web エクスペリエンスの提供を目指す継続的な取り組みの一環として、Outlook Web App を大幅に更新し、名称を「Outlook on the web」に変更します。一括処理、ピン留め、操作の取り消し、インライン返信、会議出席依頼に対して別日程を提案する機能などの新機能が追加されているほか、受信トレイの内容の 1 行表示、HTML レンダリング、書式設定コントロール、インライン イメージの貼り付けといった機能が強化されています。さらに、新しいテーマや絵文字も導入されているなど、挙げればキリがありません。また、パフォーマンス関連の機能強化も多数実施され、スマートフォンやタブレットでのモバイル ブラウザーのエクスペリエンスも改良されています。

拡張性を強化

Outlook および Outlook on the web のアドイン モデルでは、開発者がユーザーの Outlook エクスペリエンスに機能を直接構築できますが、このモデルの堅牢性がさらに強化されます。今回のバージョンでは、アドインと UI コンポーネントが新しい方法で統合されるようになったため、メッセージや会議を作成したり読んだりするときに右側のタスク ウィンドウでメッセージや会議の本文を強調表示したり、Outlook リボンにボタンやドロップダウン メニューを表示したりできます。また、My Templates などの組み込み済みのアドインによって、ユーザー インターフェイスが一新されます。さらに、ユーザー間共有モデルを使用したアプリのサイド ローディングなど、アプリをロールアウトする新しい手法が導入され、Office ストアや Outlook リボンから直接アプリをインストールするなどの操作が可能になります。添付ファイルの操作やテキストの選択などに使用できる JavaScript API も拡充されます。

: Exchange Server 2016 では、MAPI/CDO ライブラリによる接続がサポートされていません。サードパーティ製品 (および自社開発のカスタム ソリューション) は、Exchange Web サービス (EWS) または EAS に移行する必要があります。

検索機能がより高速で直観的に

各ユーザーの受信トレイに格納されるメールの容量は増加の一途をたどっており、すべてのメールから必要なものをもっとすばやく簡単に検索できる方法が不可欠です。マイクロソフトは実際のデータを使用してユーザーがどのように検索を行っているかを調査し、検索結果が得られるまでの時間を分析した結果を基に、Office 365 の検索アーキテクチャとユーザー インターフェイスを変更しました。今回、これがオンプレミス製品にも適用されます。

Exchange 2016 では、サーバー側での検索速度が大幅に向上しており、また Outlook クライアントが完全にサーバー側の検索能力を活用できるようになっています。キャッシュ モードでは Outlook 2016 クライアントと Exchange が接続され、サーバーのインデックスを使用して高速で堅牢な検索クエリを実行できるため、デスクトップ検索よりもスピーディに完全な結果が得られます。

Outlook 2016 と Outlook on the web では、さらに直観的な新しい検索 UI が実装されています。ユーザーが検索ウィンドウへの入力を開始すると、送信相手のユーザーやメールボックスのアイテム、検索履歴に基づいて、直観的に候補が表示されます。

Outlook on the web では検索結果の隣に絞り込み検索が表示されるため、検索結果の中からまさに必要なものをすばやく探し出すことができます。予定表の検索を使用すると、ユーザー自身や他のユーザーの予定表に登録されているイベントを検索できます。

データ損失防止 (DLP) 機能を強化

Exchange 2013 には、機密情報が悪意あるユーザーの手に渡らないように流出を防止する DLP 機能が組み込まれていますが、Exchange 2016 ではこれが拡張されます。新しい Exchange には、南米やアジア、ヨーロッパの各地域で広く使用されている形式のデータを含め、30 種類の新しい機密情報が追加されます。既存の機密情報の種類も一部が更新され、正確性が向上します。

組み込み済みの機能が強化されるだけでなく、サードパーティ製の分類システムによってコンテンツの分類が実行されるときに DLP とトランスポート ルールがトリガーされように構成できるようにもなります。ユーザーに送信されたメッセージに対してルールが適用されるとメール通知が送信される場合がありますが、この通知もカスタマイズ可能です。

電子情報開示機能がより高速でスケーラブルに

検索アーキテクチャが根本的に見直され、複数のサーバーに非同期で負荷が分散されるようになったことで、電子情報開示検索の高速性と信頼性が向上し、フォールト トレランスも改善されています。これにより、検索結果の信頼性と検索速度が向上します。UI での検索のスケーラビリティも強化され、コマンドレットを使用して検索可能なメールボックス数の制限が撤廃されます。また、パブリック フォルダーのコンテンツに対して電子情報開示検索を実行できる機能、およびパブリック フォルダーにデータを格納して長期間アーカイブできる機能に対するご要望が多かったため、今回のバージョンにはこれらの機能が実装されます。

アーカイブの自動拡張機能を実装

特に膨大な量のデータを格納する必要があるユーザーのために、Exchange 2016 ではユーザーのアーカイブ メールボックスの容量が 100 GB に達すると、50 GB ごとに自動で予備のアーカイブ メールボックスがプロビジョニングされるようにしました。アーカイブ メールボックスのコレクションは、ユーザーや管理者に 1 つのアーカイブとして表示されるので、PST ファイルからインポートするなど集中的に使用されてアーカイブ データが急激に増大した場合にも対応できます。

ハイブリッド機能を強化

ハイブリッド機能を使用すると Exchange 展開をクラウドに拡張できるため、たとえば他社の買収時や合併時にもクラウドへのスムーズな移行が可能です。また、Office 365 で加えられた変更点を反映して最新状態を維持できるように、クラウド ベースのハイブリッド構成ウィザードを作成しています。

このほか、ハイブリッド シナリオではすべてのユーザーのメールボックスをオンプレミスに置いたまま Exchange Online Protection、Exchange Online Archiving、Azure Rights Management、Office 365 Message Encryption、クラウド ベースのデータ損失防止などといったクラウド サービスを活用して、Exchange 展開を拡張することができます。先日 Advanced Threat Protection セキュリティ サービスが追加されており、電子情報開示に対応した Equivio の分析機能 (英語) も近日中に実装される予定です。

今後について

ここまで、Exchange Server 2016 プレビュー版の機能強化について一部を紹介しましたが、プレビュー リリースから最終リリースまでの間に、さらに監査アーキテクチャや監査ログ検索などの機能も強化する予定です。SharePoint Server 2016 および Office Web Apps サーバーのベータ版がリリースされた後は、新機能のドキュメントの共同編集機能 (英語) が利用可能になり、現在添付ファイルを使用して行っている作業をよりスムーズに行えるようになります。

使用を開始するには

最終リリースまでにはまだ多くの作業が残っていますが、マイクロソフトではこのプレビュー版を皆様にお届けでき、たいへん嬉しく思っています。なお、Technology Adoption Program (TAP、英語) のメンバーの方以外は、このプレビュー版を運用環境で使用しないでください。このプレビュー版は Exchange Server 2010 SP3 RU10 および 2013 CU9 と共存させて非運用のテストを実施することができます。プレビュー版の詳細については、TechNet Exchange Server 2016 のライブラリで紹介されている初期の製品ドキュメントを参照してください。皆様にご利用いただき、ご意見を伺うことを楽しみにしています。

Exchange チーム