ビジネスプロダクティビティ製品チーム

Office 関連製品群を担当するプロダクト マネージャーが最新の情報をご紹介します

August, 2010

  • 組織の行動力を高めるための仕組み作り

    破壊的変化に勝ち残るための組織力

    ご承知の通り近年、市場の勢力図が一夜にして塗り替わる事態が多発していますが、これには情報流通量の増大が関わっていると考えています。ネットを流れる情報はかつてない勢いで増大し続け、様々なレベルの情報をほとんど無償で利用できます。もはや情報を「知っている」ことの価値は薄れ、代わりに雑多な情報から本当に必要なものだけを素早く「選別する」能力が重要となりました。他者に先駆けて情報から価値を生み出すスピードこそが、個人と組織があらゆる競争に打ち勝つための鍵なのです。このことがさらに、消費者優位の市場と環境変化のスピードアップを促進しています。

    ビジネス活動ではお金や時間、人材などの制約に縛られるため、いくつかの選択肢から最もよさそうなものを選び、それに賭ける必要があります。これが「意思決定」で、それを支える IT として真っ先に挙げられるのが、「ビジネス インテリジェンス
    (BI)」ツールです。大量に蓄積されたデータから傾向を見出し将来予測するのが、このツールに求められてきた役割です。しかし、この表面的な機能がユーザーの誤解を生み、多くの失敗をもたらしました。BI ツールを単なる「データ分析ツール」として考えてはいけないのです。

    第一に、過去のデータの蓄積を分析しても、破壊的変化の予測にはほとんど役に立ちません。破壊的変化は、真正面から来ないから破壊的なのであって、その測定は大変困難なのです。それに、偶然や入力ミスなどでデータのぶれは常に存在するため、変化の予兆があったとしても、多くのノイズに紛れて見逃されがちです。では、緩やかな変化の場合はいけるのでは?
    というとその通りなのですが、しかし我々が古くから行ってきた方法、つまり「経験則」で判断するほうが、必要な時間と結果のバランスを考えればリーズナブルな場合も多いでしょう。

    第二に、データ分析はあくまで個人の取り組みであり、その成果は個人の能力や経験に大きく依存します。たとえば「ある製品の売り上げに問題がある」と上司から言われ、販売データを分析するとします。どんな関数やグラフを使うべきかは、本に書かれているようなデータ分析ツールのノウハウが物を言います。しかし、どんな軸を使って分析すべきかは、そのビジネスにおける経験がなければ分かりません。去年よりも「売り上げが下がっている」として、しかし競合他社がより下がっていれば、自社は十分頑張っているとも言えます。それよりも、下手なキャンペーンの打ちすぎで販売単価が下がっているほうが問題かもしれません。学術論文を書くのなら長い時間をかけて様々な可能性を検討できますが、ビジネスにおいては行動力、つまりスピードが命です。何と何を比較するのかという分析の視点、つまり「アタリ」を素早くつけられるかが大切であり、ここでは経験に裏付けられた「勘」が必要なのです。

    意思決定は個人のものです。組織としては、個々人の能力を向上させるのも大事ですが、それら個々人の能力や知識を共有し組織としての意思決定力を高めることで、個人依存へのリスクを回避する必要があります。しかし BI をデータ分析ツールと見なしている限り、個人の範疇を超えられません。それに BI の本来の目的は、最もよさそうなものの選別であって確率分布計算ではないので、専門家しか使えない時間のかかる高度な分析アルゴリズムなど、大多数の従業員にとっては無駄でしかありません。各選択肢の実現確率を一桁%まで出さなくても、上下さえ分かれば十分です。そんなことよりも、新入社員でもベテランに近い勘所で物事をとらえられるように、組織全体で知識や経験を共有するほうがよほど重要であり、これが組織全体の意思決定力向上につながります。

     

    まず何から始めるべきか

    知識や経験を他人と共有するのは容易ではありません。過去には、個人の知識を明文化 (形式化) して共有するナレッジ マネジメントの試みなどもなされてきましたが、多くの失敗も生み出しました。詳細は別の機会に触れますが、最大の問題は、経験の共有の難しさにあります。どんなに知識を形式化しても、その知識が生まれた背景や文脈への理解がなければ応用は難しいのです。たとえば、ある顧客が自社にとっての高価値顧客かどうかについて、営業部門と経理部門で意見が分かれる場合があります。営業は、その顧客が古いお得意様で、業界の購買動向に影響を与えていると主張します。経理は、頻繁な特別対応のため間接コストがかかりすぎ、優良顧客ではないと主張します。どちらも正しい主張ですが、お互いの理屈を理解はできても心から納得ができないのは、顧客価値のとらえ方が違うために、相手の理屈を自分の文脈に当てはめられないためです。もしこの2者が事前にお互いの文脈を理解していれば、話がこじれる前に自然と打ち手が出ることでしょう。

    「戦略」は企業や組織の共通言語となります。営利企業の全社員の共通目標が「収益の拡大」であることを疑う人は少ないでしょうが、どのように収益を拡大するか、という道筋に対する理解は異なるでしょう。営業は売り上げの拡大を目指すあまり埋没コストを軽視、経理はコストの削減を目指すあまり波及効果を軽視するかもしれません。しかしお互いの道筋、つまり成功の定義、順序、期間、投入資源、ステークホルダーなどを理解していれば、相手がそう考える理由や自分がどう貢献できるかもわかるはずです。たとえば、バランスト スコアカードで用いられる「戦略マップ」のように戦略を図式化することで、経験の浅い従業員でも、組織戦略に対する自分と相手の立ち位置、何が当面の目標で何影響されるのか、を理解することができます。

     

    もちろんこのような特定の手法を使わなくても、日ごろの経営者のメッセージや創業理念、戦略上クリティカルな指標の可視化なども、従業員の相互理解を深める有効な戦略情報となります。戦略の共有によって個々人の戦術間の整合性をとり、結果として組織の戦略実行力を高めることができます。

     

    戦略を中心としたコラボレーションを促進するマイクロソフトの BI

    SharePoint 2010 を中心としたコラボレーション基盤が、企業や組織の戦略を素早く共有し、戦略実行力を強化します。SharePoint 2010 では、ビジネス管理のためのダッシュボードを作成できますが、この仕掛けが戦略共有の軸となります。

    SharePointは、バランスト スコアカードをはじめとする様々な業績管理手法に対応し、柔軟な構造のスコアカード (KPI の一覧) や戦略マップ、対話型分析グラフなどを作成できます。この KPI が表す優先目標あるいは戦略マップが表す戦略構造そのものが、その企業や組織での共通言語となります。そして戦略上の問題点を見つけたら、いちいちツールを切り替えることなく、その問題のみに着目して、素早く根本原因にたどり着くことができます。戦略に沿って分析の着眼点が提示されているわけですので、分析に不慣れなユーザーでも目的の情報に素早くたどりつき、また同じダッシュボードを参照する他のユーザーとスムーズに対話することができます。

    また SharePoint には、こうした伝統的な BI 機能以外にも、文書管理機能や検索機能、人の検索や企業内ソーシャル ネットワークを利用する機能など、スピーディなコラボレーションのために必要なあらゆる機能が搭載されています。さらに Excel など Office アプリケーションとの連携性も高く、これら日ごろ使い慣れた柔軟なツールで、入手した情報をもとに新しいアイデアの作成やスムーズなコミュニケーションが行えます。これらにより、企業や組織内のあらゆる情報やユーザーとのつながりが強化されます。

    たとえば、販売実績データを紐解く必要性を感じたとき、よほどの分析になれた人でもない限り、前任者が作成した過去の Excel レポートを参照したり、詳しそうな人に聞いたりしたいと思うのが普通でしょう。SharePoint では情報の所在や形式を意識する必要なく、キーワード検索するだけで、業務データや KPI だけでなく、安全に管理された過去の Excel レポート、その問題に関するエキスパートなどに素早たどり着くことができます。さらに人の頭の中の経験的な暗黙知さえ、ソーシャル ネットワークを通じて活用できます (これついては、次回ご紹介します)。

    このように、SharePointによる新しい BI「システム」は、戦略を中心に組織内コラボレーションを発展させ、優れた反射神経を持つ、行動力の高い組織を生み出すのです。

  • 「破壊的変化」の時代のプロダクティビティとワークスタイル

    今回から数回に分けて (回数は未定です)、私どもが日ごろご提案する「ビジネス プロダクティビティ」の意義や実例、そしてその未来についてご紹介していきます。「ビジネス プロダクティビティ」をもっとも身近な日本語に訳すると、「事業の生産性」が適切でしょうか。米国本社でこの単語を使い始めた時、どう表現したものかと悩みましたが、結局はそのままカタカナでいくことにしました。「生産性」が強く持つ “効率” のニュアンスを避けたかったのです。「プロダクティビティ」は、単に業務スピードの向上を目指すものではなく、新しい知識やアイデアを生み出す土台をも含んだものです。私どもがお手伝いしたいビジネス プロダクティビティとは、企業の収益向上に直結するものなのです。

     

    組織と個人が生き残るために必要な進化

    日本企業におけるホワイトカラーの生産性の低さについては、皆様一度ならず耳にされていることでしょう。どのような生産性がどの程度低いのか、その視点やデータには様々なものがあるため、一口で結論付けることはできません。しかし、米国企業に身を置くものの実感としては、主に「時間」や「共同作業」に対する考え方の違いがデータに表れてきているように思われます。

    1 つ目の「時間」についてですが、より具体的には、インプットとしての時間とアウトプットとしての品質のバランスに対する考え方の違いです。弊社をはじめ多くの米国企業では、1 人の従業員は同時に複数の部門横断的プロジェクトに参画し、スペシャリストとして貢献します。各人の責任範疇は明確で細分化されているため、まずは自分に課せられた最低限の役割を最小限の時間で果たしたうえで +α を考える傾向が強くなります。一方で伝統的日本企業では、1 人の従業員は 1 つの部門に縛られるものの、特定の業務フローに対して比較的幅広い役割を担います。やや不明瞭ながらも幅広いタスクを持つため、業務全体としての最終的な品質を上げるインセンティブが強くなります。もちろん双方に良し悪しがあるのですが、市場や顧客マインドが一夜にして変化するように見える「破壊的変化」の時代においては、時間に重きを置いたほうが成功する確率は高そうです。

    2 つ目の「共同作業」についてですが、こちらも前述の組織との関わり方に大きく関連した話です。先の例と同様に訳語に悩まされる単語に「コラボレーション」があります。一番ニュアンスが近いのは「協業」かもしれませんが、通常はもうすこし大きな意味で使われる単語ですし、かといって「共同作業」では単に一緒に仕事をする “Co-Work” の意味が強すぎます。結局はこれもカタカナでいくことになるわけですが、本来の「コラボレーション」は、シナジーにより付加価値を生み出すような働き方です。各人がプロフェッショナリズムを持ち寄り、新しい知識や知恵を生み出していく「場」であり、いわゆるナレッジ マネジメントが目指した姿です。

    このような仕事のスタイルは、欧米系企業に多く見られる特徴です。一歩責任範疇を外れると何もしないのが難点ですが、自分の責任範疇においては常に明確に意見を持ち、それを表明し、ぶつけ合おうとします。ある教育者の方の論ですが、これは学童教育の違いに大きな原因があるそうです。紙面の都合で詳細には触れませんが、正解を求めようとする日本型教育に対し、アイデアを求めようとする欧米型の教育では、意見を述べることこそ重要でありその質は問われません。欧米人とのディスカッションに参加された経験のある方ならお分かりでしょうが、彼らは非常にたくさん質問や発言をします。しかしよく聞いてみると、日本人ならまずしないような、稚拙でつまらない質問や発言が実に多いのです。これは、最終的により優れたアイデアが生み出すことを目的とする教育と文化が背景にあり、満を持して正解らしきものを答える人より、たたき台となる独自のアイデアをどんどん出す人が評価されるためでしょう。

    話が横道にそれましたが、組織構造上、教育および文化的背景の両面において日本企業には、総和として正解と思われる答え、あるいは特定の有力者が望む答えに到達すべく責任とタスクを共有する「共同作業」を行う動機があるのです。答えが明らかな場合には大変に強力な推進力となりますが、答えが見えない破壊的変化の時代においては、その変化への対応が難しく、また多様な意見が封印されやすいため、適切なワークスタイルとは言えないかもしれません。

    国内市場が飽和し海外市場に活路を求めていけば、また、技術が進歩し様々な制約条件が緩和することで海外企業の日本市場参入が進めば、さらに変化のスピードは速くなり、競争は確実に激化します。この点においてもはや選択肢はありません。国内市場で戦うにしても海外市場に打って出るにしても、はたまた国籍を捨ててグローバル化するにしても、企業は生き残りをかけたプロダクティビティ競争に巻き込まれます。そしてもちろん個人においても同じことが言えます。すでに地理的な壁はかなり取り除かれており、やがては言語の壁にもポジティブな要素はなくなるでしょう。全世界から集まる優秀な人材に対抗するためには、個々人のプロフェッショナリズムを磨き上げ、組織としてのプロダクティビティ向上に貢献できる人材になる必要があります。私どもマイクロソフトは、そのような組織と個人のワークスタイルを支える製品とその使い方をご提案しています。

     

    マイクロソフト「Wave “14”」が目指す次世代のプロダクティビティ

    この2010年5月に、Office 2010、SharePoint 2010、Visio 2010、Project 2010 という4つの新製品をリリースしました。特に Office 2010 と SharePoint 2010 は、非常に多くの企業および組織で、すでに活用いただいているプロダクティビティ ソフトウェアで、その最新バージョンである 2010 には、日本企業の組織や個人のワークスタイルを革新する、様々な先進機能を盛り込みました。

    Office 2010 は、マイクロソフトの DNA といっても過言ではない、PC の世界で個人のプロダクティビティに貢献する製品です。データや文章などの情報を生成し文書化、人の意思決定や情報伝達に役立てるソフトウェアであり、つまりその文書がアウトプットの最終目的になります。代々のバージョンアップで、文書の内容のクオリティを上げるための様々な機能拡張を行ってきましたが、近年はコラボレーションの向上に重点を置いた機能拡張と製品間連携を強化しています。さらに、スマートフォン用の Office Mobile 2010、ブラウザー版の Office Web Apps といった異なるインターフェースをご提供し、時間や場所を問わず、様々なデバイスから Office 文書にアクセスし、データを損なうことなく適切な作業を行うことができるようになりました。

    一方 SharePoint 2010 は、サーバー製品ですので、エンドユーザーの方の中にはご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが、企業情報ポータルや文書管理、ワークフロー、データ分析、検索、ソーシャル ネットワークなどのプラットフォームとして、世界的に非常に高い評価とシェアをいただいています。この製品は 4 代目ですが、単なる情報共有基盤から、Office デスクトップとの連携などを強化したコラボレーション基盤へと進化しました。

    これらの製品名の末尾に付加した数字は 2010 ですが、デスクトップ製品のヘルプなどに表示される正式なバージョン番号が 14 のため、社内では正式製品名が決まるまでは Office “14” や SharePoint “14” などと呼んでおり、これら同一バージョン製品を総称して Wave “14” と呼んでいました。対外的にはこのままではわかりづらいので「2010 シリーズ製品」あるいは「Office 2010 関連製品群」などと表現したのですが、ここはニュースレターを購読いただいているロイヤル カスタマーの皆様とのコミュニケーションの場ですので、あえて Wave “14” をそのまま使いたいと思います。

     

     

    Wave “14” では、プロダクティビティの全体像を、個人とシステムをつなぐマン-マシン インターフェースである Office 2010 と、そこに情報を経由した様々なつながりをもたらすサーバーおよびサービスという 2 層でとらえています。昨年 11 月に先にリリース済みの Exchange Server 2010、今後リリース予定の Communications Server “14” もここに含まれます。これらのサーバー群は、企業内に構築する自社展開型環境 (オン プレミス) だけでなく、マイクロソフト自身や他のパートナー企業がホスティングするクラウド環境としても提供されます。そして、オン プレミス、クラウドに関わらず、Office インターフェースからこれらのサーバー サービスにアクセスし、データや文書、ビジネス プロセス、人の知識にシームレスにつながることができるのが、私どものビジネス プロダクティビティ プラットフォームの全体像です。次回以降では、このプラットフォームの価値を、具体的なシーンに落とし込んでいくつかご紹介していこうと思います。